【ネタバレ感想】セリフ一切なし!映画『Flow』評価は難しいが心を揺さぶるラスト30分|Amazon Prime Video配信

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映画『Flow』とは?(概要・あらすじ)

『Flow』は、ラトビア、フランス、ベルギー合作の3DCGアニメーション冒険映画です。監督はラトビア出身のギンツ・ジルバロディスが務め、脚本、音楽、編集、撮影も兼任しています。

【あらすじ】
人間が姿を消した世界で、大洪水によって住処を失った一匹の猫が旅に出る物語です。猫は流れてきたボートに乗り込み、犬、カピバラ、ワオキツネザルなど、様々な動物たちと出会います。彼らは共に想像を超える危機に直面しながらも、次第に友情を育んでいきます。本作の大きな特徴は、人間の言語によるセリフが一切なく、動物たちのリアルな息遣いや鳴き声だけで物語が描かれる点です。

公開情報と評価

日本では2025年3月14日に劇場公開が予定されています。本作は第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映されて以来、世界中の映画祭で絶賛されており、第82回ゴールデングローブ賞でアニメ映画賞にノミネートされるなど、非常に高い評価を獲得しています。

インディペンデント作品でありながら、その革新的な制作体制と圧巻の映像体験は、アニメーション映画の歴史を変えたとまで評されています。


【感想】退屈な1時間からの怒涛のラスト30分!映画『Flow』の評価は難しい、でも…

先日、世界的に高い評価を得ているアニメーション映画『Flow』を観てきました。

正直に言うと、普段あまり賞を受賞するようなアート系の長編アニメ作品は観ないタイプですが、セリフが一切ない動物だけの物語という前情報に惹かれて観てみました。

正直、最初の1時間は「?」でした

物語が始まると、美しい自然の風景と一匹の猫を中心とした動物たち。セリフはなく、聞こえるのは音楽と環境音と動物たちの鳴き声だけ。

「これは一体何を見せられているんだろう…?」

最初の1時間弱、正直に言って少し退屈でした。そこそこ美しい映像だとは思うものの、はっきりとしたストーリー展開があるわけでもなく、淡々と時間が流れていく感覚。85分の映画ですが、この時点では「ちょっと長いな…」と感じてしまっていました。

ラスト30分、世界が一変する映像体験

ところが、残り30分を切ったあたりから物語は一変します。

暗雲が立ち込め、空と海が荒れ狂う。スクリーンに叩きつけるような波の描写は、まるで『スター・ウォーズ』に登場する嵐の惑星カミーノのよう。あの荒涼としていながらも荘厳な映像の迫力に、私は一気に引き込まれました。

それまでの静けさが嘘のようなスペクタクル。このクライマックスで、私はようやくこの物語が何を伝えようとしていたのかを理解できた気がします。

心に残った、象徴的なシーンたち (以下、ネタバレあり)

この映画はセリフがない分、観る者の心に直接訴えかけてくるような象徴的なシーンが多くありました。

謎めいた「鏡」の存在

まず、作中にたびたび登場する「鏡」がとても印象的でした。あれは何を象徴していたのでしょうか。

孤独だった主人公の猫が、水面に映る自分や、人間が残した鏡を覗き込む。それは、ただ自分の姿を認識するだけでなく、「自分とは何者か」という内面への問いかけだったのかもしれません。そして、他の動物たちという「自分とは違う存在」と出会ってからの鏡は、また違った意味を持っていたようにも感じます。

希望を感じさせた鳥の旅立ち

ラスト近くの鳥の旅立ちのシーンが幻想的です。

共に数々の危機を乗り越えてきた仲間との、静かな、しかし確かな絆を感じさせる別れ。言葉はないけれど、それぞれの生きるべき場所へ向かう力強さと、希望に満ちた未来を予感させる、とても美しい映像でした。

静けさと再生のエンディング

そして、あの激しい嵐が嘘のように、一気に水が引いていくエンディングには、心を揺さぶられました。絶望的な状況が終わりを告げ、再び大地が現れる光景は、何よりも雄弁な「希望」のメッセージでした。

特に印象的だったのが、最後に残った水たまりに、生き残った動物たちが一緒に映るシーンです。物語の序盤、孤独に自分を映していた「鏡」とは対照的に、最後は大切な仲間たちと共に水面に映る。言葉はなくとも、彼らが仲間になったことが伝わってきて、印象的なラストシーンでした。

まとめ:評価は難しい、けれど記憶に深く刻まれる作品

冒頭で木の上にあったボートが「繰り返される洪水」を示唆していたように、この映画には多くの考察の余地が残されています。

「誰にでもオススメできるか?」と聞かれれば、そのアート性の高さから少し悩んでしまいます。でも、最後の30分に味わった映像への没入感と、鏡や鳥の旅立ち、そして静かなエンディングといった心に焼き付くシーンの数々。それらがあったからこそ、この映画は私にとって忘れられない一本になりました。

退屈だと感じた時間さえも、最後のカタルシスのための壮大な前フリだったのかもしれません。普段見ている映画とは全く違う体験がしたい方、映像美に飲み込まれてみたい方には、ぜひ観てほしい作品です。

ご参考:宇多丸さんの感想 週刊映画時評ムービーウォッチメン【公式】2025年3月27日
前編 https://www.tbsradio.jp/articles/94333/
後編 https://www.tbsradio.jp/articles/94334/

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