映画『アプレンティス』:トランプが激怒!上映阻止に動いた問題作は何を描いたのか?

映画

ドナルド・トランプ氏本人が上映を阻止しようと法的措置に出たことでも話題の映画が、2025年1月17日に日本で公開されました。 その名も『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』。世界で最も物議を醸す男、ドナルド・トランプは、いかにして”怪物”となったのか?その衝撃的な誕生秘話に迫ります。

主な登場人物とキャスト

役名俳優名
ドナルド・トランプセバスチャン・スタン
ロイ・コーンジェレミー・ストロング
イヴァナ・トランプマリア・バカローヴァ
フレッド・トランプマーティン・ドノヴァン

監督紹介:アリ・アッバシ

名前アリ・アッバシ (Ali Abbasi)
国籍・出身イラン・テヘラン生まれのデンマーク国籍
経歴イランで生まれ育ち、ヨーロッパへ移住。スウェーデンで建築を学んだ後、デンマーク国立映画学校で監督としてのキャリアをスタートさせた。
主な監督作品『シェリー』(2016)
『ボーダー 二つの世界』(2018) ※カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ
『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022) ※カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
作風人間の内面に潜む闇や社会のタブーに鋭く切り込む作風で知られる。ファンタジー、ホラー、社会派ドラマなど、ジャンルを越境する独自のスタイルで、現代で最も注目される監督の一人。

師匠は伝説の悪徳弁護士。若きトランプの変貌を描く衝撃のリアルストーリー

本作は、1970年代から80年代のニューヨークを舞台に、まだ不動産開発業者としてキャリアをスタートさせたばかりの若きドナルド・トランプの姿を追います。彼を”育て上げた”のが、マッカーシズム(赤狩り)で悪名を馳せた伝説の弁護士ロイ・コーンです。

当初は気弱ささえ見せていた青年トランプに、コーンは「勝つためには手段を選ぶな」という非情な哲学を徹底的に叩き込みます。

ロイ・コーンの勝利への3つのルール

  • ルール1:攻撃、攻撃、攻撃 (Attack, attack, attack)
  • ルール2:非を認めるな、全否定しろ (Admit nothing. Deny everything)
  • ルール3:どれだけ劣勢に立たされても勝利を主張しろ。決して負けを認めるな (You claim victory. No matter how beaten you are, never admit defeat)

脅迫や盗聴も厭わないコーンの冷酷な指導のもと、トランプは成功への道を突き進みますが、その過程で師の想像すら超える”怪物”へと変貌を遂げていくのです。


見どころはここだ

    • 主演セバスチャン・スタンの憑依的演技
      『アベンジャーズ』シリーズのウィンター・ソルジャー役で知られるセバスチャン・スタンが、若き日のトランプを熱演。 役作りのために四六時中トランプの映像や音声に触れ、約7キロの増量にも挑んだその姿は「本人にしか見えない」と絶賛されています。 ファンを失う覚悟で挑んだという彼の俳優生命をかけた演技は必見です。

    • 鬼才アリ・アッバシ監督の鋭い視点
      イラン出身で『聖地には蜘蛛が巣を張る』など、人間の暗部を鋭く描いてきたアリ・アッバシ監督がメガホンを取ります。 彼は本作を、キューブリック監督の『バリー・リンドン』を参考に、一人の青年がのし上がっていく様を風刺的に描いたと語っています。 過度に悪人として描くのではなく、権力、野心、そして歪んだ師弟関係が織りなす物語を、エンターテインメントとして昇華させています。

    • 絶妙すぎる公開タイミング
      本作の日本公開日は2025年1月17日。 これは、トランプ氏の2回目の大統領就任式(1月20日)の直前という、これ以上ないタイミングです。 この映画が描く過去と、これから始まる未来がどうリンクするのか、考えずにはいられません。

映画を彩るキャラクターと音楽

アンディ・ウォーホルが出てきます。

また、本筋とは関係ありませんが、劇中では”アキオさん”と呼ばれる日本人が登場します。これはおそらく実在した柏木昭男氏と思われ、1990年にトランプ氏のカジノで世紀の対決を繰り広げた人物です。

トランプタワーの完成シーンで流れるペット・ショップ・ボーイズの名曲「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」、よかったです。

これは単なる反トランプ映画ではない

本作は、トランプという人物を一方的に批判する映画ではありません。むしろ、彼がどのようにして形成されたのかを、師であるロイ・コーンとの関係を軸に丹念に描いています。冒頭のバーでコーンがトランプを睨むシーンから、観客は一気にこの歪んだ師弟関係の世界に引き込まれるでしょう。

映画のラスト、トランプは「人間は動物だ。みんな裕福になりたい。勝って威張りたいんだ」と言い放ち、コーンの3つのルールを暗唱します。このセリフは、現代社会、そして私たち自身に何を問いかけるのでしょうか。

ドナルド・トランプという人物、そして彼が象徴する現代アメリカ社会を理解する上で、見逃すことのできない一作です。

ご参考:宇多丸さんの感想 週刊映画時評ムービーウォッチメン【公式】2025年1月23日
前編 
https://www.tbsradio.jp/articles/92260/
後編 https://www.tbsradio.jp/articles/92261/

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